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ブヒブヒ野郎 #ショートショート

「ブヒブヒ」
腹が減ったと奴が泣き出した
キャベツを数枚剥ぎ取り与えてやる
「ブヒッブヒッ」
今度は嬉しそうに鳴いた

コイツが台所に来てまだ半年程だ。
最初の頃は、野菜の切れ端を少し与えるだけで嬉しそうな顔をしていた。
 
バナナの皮と少し傷んだ実の部分をちぎって口の中に放り込んだ時などは、
「ブヒブヒブッヒ〜〜」
と歓喜の鳴き声を上げる表情はもう、可愛くてしょうがなかった。
 
それが今では、もっとくれよと言わんばかりに鳴くようになり、いつしかジャガイモやニンジンは、食べる部分よりも捨てる皮の量の方が多くなっている。
 
今や可愛さなんて微塵も無い。
最近では、成長して大きくなった口から、生ごみが溢れている。
そこで私は、すぐに一杯になってしまうゴミ袋を20ℓから45ℓに取り替える為、生ごみ専用ゴミ箱の使用説明書を取り出し、成長時の対応欄のページを開いた。

その時だった。
リビングの方から
「メェ〜〜」
と新しく買った紙専用のゴミ箱が、鳴いた。
そう言えば、しばらく紙ごみを捨てていない。
どうも、紙をめくる音に反応したようだ。
 
新型だが、昨今のペーパレス化で大幅割引だった1匹。
いや、一台である。
当然、成長型にはしなかった。

【498文字】

スマホのメモに書き残っていたものに気づき、
昨年末から、書き足し修正して仕上げてみました。


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