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【桃太郎Ⅱ:準備は整った】 #シロクマ文芸部

2年半前に書いた【桃太郎序曲】の続きがやっと完成

 木の実と葉っぱや小さな枯れ枝が、石段に重なるように落ちている。
昨日の強い風に吹かれたのだろう。
枯れ枝を踏み折った音に驚き、鳴きながらヒヨドリらしき鳥が飛び立った。
 
階段を登りきると、広い更地が現れる。
二十年前までは立派な社殿があったが、きれいに取り払われており、柱があったと思われる場所には十二個の礎石が残っている。
 
私がこの場所に送られたのは偶然ではない。
着時の際、この社殿を破壊してしまったことは予定外であったが、それにもかかわらず宮司夫婦は、私を大事に育ててくれた。
 
私に埋め込まれた記憶では、今日これらの石の上に支援システムが届くはずだ。

 
暫くすると礎石に文字が浮かび上がった。
 
子 丑 寅 卯 辰 巳 午 未 申 酉 戌 亥
 
ヴオン ヴオン ヴオン
三度空気が揺れたかと思った瞬間、申・酉・戌の礎石がどんぶらこと音を立てながらひっくり返ると、猿・キジ・犬に似た支援システムが浮かび上がる。
しかし、残りの九個の石はピクリともしない。
 
何かのトラブルがあったのだろう、厳しい戦況の中での両親の苦労が想像できる。
 
「仕方がない、この三体で対応するしかないだろう。」
私は、現れた三体を起動するため尻尾の部分にある「起尾団」スイッチをGOにした。
すると三体が私を守るように、猿は右側へ、犬は後方へ、キジは頭上へ移動した。
私がサウスポーだと分かっているようだ。
 
さあ、準備は整った。
間もなく、この神社の上空に現れる角型宇宙船を探知すべく、布状の軽金属に「日本一」と書かれた旗状の受信機を空に向けた。
 
(つづく)
 
 
なんとか仕上げたけど、締め切り日を過ぎてました。
すみません、せっかくなので投稿させていただきます。


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