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骨抜き機  #ショートショート

子どもの魚離れが進んでいる。
「魚には骨があり、食べにくい。」と子供が嫌がるので出さない。
そんな声が聞かれる。

そこで、海産物加工業者は、「骨の無いお魚」を売りにした商品の開発が盛んだ。

そんな食品機器を開発している企業から、「新型骨抜き機」なる物が発売された。

特殊な周波数の震動で骨を柔らかくし、加圧することで、骨の成分が魚肉内に吸収され、何の違和感も無く食べることが出来るようになるという優れものだ。

そんな発明に注目した美容関係の大手企業が、この技術を買収した。
食品関係とは全くの異業種の進出に、その他の企業は、訝(いぶか)しんだ。
そして数年後、その企業から新製品が発売された。

多くの報道関係者が集まり、大々的な発表会となった。
ステージには、2台のカプセルが並んでいる。
青いカプセルは男性用、赤いカプセルは女性用だろう。
それぞれのカプセルは、太いケーブルで繋がっている。

スラリとした女性が、プレゼンをはじめた。
原理はこうだ。
○青いカプセルに男性が入ると、その骨格に超音波Aを当て、骨細胞の結合を最大限にまで緩めた後に超音波Bを当てると、ゆっくり骨細胞が復元を始める。
○赤いカプセルに女性が入ると、女性のホルモン物質と毛根の発芽細胞が抽出される。
○青いカプセルで、男性の骨格が復元を始まるタイミングで、赤いカプセルで抽出された物質を送り込む。
○青いカプセルで、男性の骨格が再生される際に、赤いカプセルで抽出した成分が骨細胞に吸収される。

この工程の後、安静にしていると、48時間で骨細胞は復元し、体の芯から、その女性を思う気持ちが湧き出るようになると言うのだ。

最後に、キャッチコピーが告げられた。
=貴方の彼を、骨抜きにしちゃえ!=

女性記者からは、失笑が漏れた。
男性記者から質問が飛んだ。
「男女が逆の効果はあるんですか?」
担当者は答えた。

「残念ながら、研究の結果、女性の骨細胞は、相手男性を選ぶことが判明しています。」

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