素手で漆を塗ってかぶれた話01
木工が趣味で、スプーンやコップなんかを作っている。木材をそのまま使ってしまうと、汚れが目立ったり、水分を吸収してカビやすくなったりするため、一般的には、油やウレタンなどで塗装をする。日本古来から使われていた塗料として、漆がある。
漆は、ウルシの木の樹液から作られ、水を吸収して固まるという特性がある。この塗料は、熱や水気に強く、最強の天然塗料とも言われる。その代償としては、素手で触ったり、個人差はあるものの木の下で過ごしたりすると、かぶれる、ということである。
現代において、漆を使用する機会なんていうものは、100人に1人いるかいないかほどだろう。そんな中で、好き好んで木工品に漆を塗ろうとした一人の人間の体験談をここに記す。
スプーンづくりで、にわかに木工デビューを果たした私は、自分の手で作ることができたことに喜び、舞い上がっていた。そのワークショップでは食用の油をコーティングの材料として使っていたが、洗剤で洗い落ちてしまうし、なにか別の塗料はないものかと考えた。
そこで、ふと、頭に浮かんだのが漆だ。漆器に代表されるように、木材の器と、漆は相性がよく、昔から日本の食卓で使われてきた。「やってみないと分からない」「ものは試しだ」の性格な私は、早速、大型のホームセンターに出かけて、漆を探した。
ある。あるぞ。漆だ。チューブに入っているタイプがほとんどで、40g、1,000円ほどで案外安い。早速購入して、わくわくした気持ちで家に帰る。漆の塗り方にはいろいろな種類があるが、初心者におすすめなのは「拭き漆」と言われる技巧で、漆を少し多めに塗ったのち、しっかりと拭き取り、これを数日に分けて7回~8回行う方法。
かぶれとはなにか。かゆくなるという感覚は知っている。でも、きっと、蚊に刺された赤い「ぽち」や、毛虫にやられたであろう赤い「ぷつぷつ」とは何が違うのか。そもそも、私は漆への耐性があり、かぶれないのではないかという知らぬ自信から、「できるだけ触らないように注意しつつ、素手で作業をやろう」という決断にいたったのだ。
早速、スプーンに塗ってみよう。ごしごし、しゅっしゅっ。
つづく。
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