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セブンイレブンの上げ底

セブンイレブンの社長の記事は、なぜか心に少し冷たい響きをもたらした。上げ底などしていない、と断言し、批判するなら事実に基づくようにと促すその主張には、確信めいた響きがある。だが、それと同時に、どこか自分の言葉の重みや責任を測りかねているような、曖昧な影が宿っているようにも感じられたのだ。

考えてみれば、商品に上げ底があるかないかの話は、それだけで済むものではない。買い物客が、棚に並ぶ商品を手に取り、包装やラベルを覗き込むときのあの瞬間、彼らは単に「買う」か「買わない」かを選んでいるだけではないのだ。そこには小さな信頼のやり取りがあり、密かな期待が含まれている。パッケージを開けてみて、期待以上のものがあれば、顧客はそれを喜び、ほんの少しでも騙された気分がすれば、次回はその選択を控えるだろう。小売業の信頼とは、意外にこうした微細なところから積み上げられるものである。

しかし、社長の言葉は、あたかも顧客の目を曇らせようとするかのように響いた。もしかすると、彼自身の視点がすでに偏っているのかもしれない。おそらく、日々の数字や利益の増減に追われているうちに、「何をどのように売るのか」という基本的な問いが二の次になり、微妙な顧客の心理に疎くなっているのかもしれない。それも理解できない話ではない。膨大な数のコンビニ店舗が、いつも同じ色の看板を掲げ、全国の都市から郊外にまで広がっている。それがもたらす圧倒的な力と競争の中で、ほんの一つ一つの商品や、一人一人の顧客の声に、耳を傾ける余裕が失われているのかもしれない。

だが、このままでは、顧客の信頼を少しずつ削ぎ落としてしまうことになるだろう。社長の発言は消費者に誤ったメッセージを伝え、さらなるイメージダウンと業績悪化を招くことになるとしか思えないのだが。

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