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帰省

18歳になる息子が3カ月ぶりに高専の寮から帰ってくる。前回ゴールデンウィークに帰省して以来だ。いよいよ今日から夏休みが9月の下旬まで始まる。高専は高校と夏休み期間が異なる。そして今回は有意義な夏休みを過ごしてほしいものだ。

今日は晴れて暑い一日だった。朝から蝉の声が響き渡り、夏の匂いが空気に漂っていた。私は車を運転して、新幹線の駅まで息子を迎えに行った。帰省ラッシュはまだ始まっていないが、道路は工事で混んでいた。車内ではFMの音楽が静かに流れていた。軽快なリズムが暑さを和らげるようで、窓の外の景色とともに流れる時間を心地よく感じた。

改札口で息子の姿を見つけた時、少し背が伸びたように見えた。彼の顔には、以前と変わらぬ真剣さと、新しい経験の跡が刻まれていた。大きなバックパックを肩にかけ、彼は私に気づくと小さく手を振った。

「おかえり」と私は声をかけた。

「ただいま」と息子は短く返事をし、疲れた笑みを浮かべた。その瞬間、私の胸には奇妙な安堵感が広がった。彼が家に戻ってきたこと、それ自体が私にとって大きな意味を持っていたのだ。

車に乗り込むと、エアコンの冷たい風が心地よかった。工事で混んでいる道路を通りながら、私たちは静かに音楽を聴きつつ、話をした。彼の学校生活や友達の話を聞きながら、私は彼の成長を感じ取った。

「今回はどんな計画を立ててるんだ?」と私は尋ねた。

「ロボットコンテストに参加する予定だよ」と彼は答えた。彼の声には、期待と興奮が混じっていた。ロボットコンテストの話は以前少し耳にしたが、それが彼の夏休みを彩る一つの要素になることを直感的に感じた。

家に着くと、息子は荷物を下ろし、自分の部屋に向かった。彼が戻ってきたことで、家の中が一気に活気づいたように感じられた。夕食の時間になり、彼の好きな料理を用意した。彼は美味しそうに食べ、学校での出来事や友達との話を少しずつ語り始めた。

夜が更けると、私は窓の外を見つめた。静かな夏の夜、虫の声が遠くで聞こえる。この夏休みが息子にとって有意義なものになるようにと、心の中で祈った。二年後息子は再び寮を出て、さらに学業を積むために旅立つ。その時が来るまで、私は彼を温かく見守り、彼の成長を支えていくつもりだ。夏の空には無数の星が輝いている。その星々が、彼の未来を明るく照らしてくれるように願いながら。

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