空飛ぶ汽車とサラの夢 第5話
「サラ、ありがとう。元気が出たよ 」
ケイが、空になったお皿を置いて言いました。
「僕はね、本気で光る玉を探しに行くよ。そしてサラ、君に一緒に来て欲しい 」
「ね、昨日の夜、家で光る玉の話をしたらさ、僕の家族はみんな ” またケイの夢物語が始まった ” って笑ったんだけど、あとでおばあちゃんがこっそり教えてくれたんだ。本気で願う人のところにだけ、空からやってくる汽車があるって。そのおまじないを教えてくれたんだ。僕はこれから毎日願うから、そしたらきっと、汽車はやってくるから、そしたらサラ、一緒にその汽車に乗ってくれないか?」
「え〜、なんでサラ?だってサラ、なんにも上手にできないよ。お兄ちゃんの役に立ちたいのに、こないだだって秘密基地、サラだけうまく作れなかったし、今日もオムレツ、上手にできなかった......」
「サラ、いいんだよ。なにかできなくていい。サラがいてくれたら、それだけで僕の力になるから。ね。考えておいてくれるかい?」
「うん......分かった 」
その夜、布団に入ってから、サラはあれこれ想像してみました。空飛ぶ汽車ってどんなだろう?きっととっても気持ちいいんだろうな。羽が生えてたりして。でも、怖くないのかな。だれが運転するんだろう......。
考えても考えても、あれこれイメージは膨らみます。ドキドキするのは、嬉しいからなのかな。怖いからなのかな。自問自答をしているうちに、サラは眠りにつきました。
その次の日の朝、
「おはよう、小鳥さん。今日はどんな日になるかな?」
サラはいつものように森にいました。
「おはよう、サラ」
いつものようにケイも森にいました。二人でいつもの散歩です。サラは歌っていました。お兄ちゃんはハーモニカを吹いて歩きます。
ふと、
お兄ちゃんが、ハーモニカのメロディを変えました。
「ラーラシ ラララ♪」
” かごめかごめ ” です。
全て吹き終わると、お兄ちゃんは、姿勢を正しくして、手を胸の前で合わせて、言いました。
「夜明けの晩は今でした。後ろの正面、私の神さま。どうか私の願いを天に届けてください 」
サラはキョトンとして、お兄ちゃんを見ていました。
「なぁに、それ?」
サラは、ケイがピンとした姿勢をゆるめていつもの感じに戻るのを待ってから、聞きました。
「あ、これね。昨日話したやつ。おばあちゃんが教えてくれた空飛ぶ汽車を呼ぶおまじないだよ。みんなには内緒な。また、頭がおかしいって言われるから 」
そう言ってお兄ちゃんは、サラに向かって微笑みました。
サラも「うん!」
とうなずいて、「かーごめかごめ〜」っと歌いながら、森を散歩しました。
木々はサワサワ、風とともに揺れていました。
それからというもの、二人の朝の森の散歩は、サラのでたらめな鼻歌のあとには、 ” かごめかごめ ” を歌うのが日課になりました。
「ほんとに来るのかな?」「どんな風に来るのかな?」二人であれこれ想像するのもまた日課になって、1ヶ月が経った頃のある朝。
「お兄ちゃん...…!!」
次回へつづく
原作・ 絵 Ayane Iijima
原案 Mariko Okano