nAo

詩と散文

nAo

詩と散文

最近の記事

ぽんころん

東博にて『内藤礼 生まれておいで  生きておいで』に浸る 小さくて はかなげなものたちをじっと見る きらきら さらさら ひらひら ふうわりした 何か たとえば自分にとっての猫のきんたまや 道端の銀杏のように いとおしく かけがえのないものたち ところどころに東博の小さな土偶(所蔵品)も鎮座しており好ましかった どれもこれも赤子のような 母のような現象建物も自分も他者も等しく 祈るようにそこに在りました 今日は一子の26才の誕生日 あの日は 風の強い日でした きょうは

    • ぽつねん

      三年ぶり開催の祭りの日 ひと気のない薄暗い棟で しずかに発光しているものども 生物室のピラニア トラウツボ 柱の陰にもたれていたり 階段の踊り場にぽつねんと   明るい棟では おそろいの衣装や被りものの子どもたちが ひらひらといい匂いをさせて通り過ぎてゆく 暗がりで知った顔などひとりもいないダンス公演を見ている 学校がやっていることは今もむかしも大差ない   自習室で制服のまま突っ伏している息子よ くしゃくしゃのクラスTシャツはロッカーの中で ひとりぼっち   陽の目を見るの

      • 草大福

        国道沿いの谷間の広っぱへ よもぎを採りにゆきます よもぎなんてババくさいし 男子に見つかったら ぜったい馬鹿にされるって はやくはやく  たくさん摘まなければ 採ったよもぎを湯に放つ 蒸気をすーんと吸い込んで 水にとって冷ましたら きょうはここまで あくる日、学校へ行ったけれど あたまの中は団子でいっぱい そのへんの色の薄いのじゃなくって くろぐろとした団子を作るのだ がしかし  家へ着いたら よもぎは大福に化けていた あんこ入れてきれいに丸めて ばあちゃん待ってたさ

        • ゆりかもめ

          汐留ホールでピアノを聴いたあとは モノレールで終点までゆこう 約束も予定もない ただ海や空を眺めていたいのです オトナだって (あいているなら)  いちばん前へ座りたい 仕事を終えたガンダムが 街を見守っている、埋立地。  ここにはなんでも揃っていて なのに  欲しいものなんてなにもない 上下前後左右 めくるめくトーキョー 風吹くまにまに硝子をすりぬけて 鳥にだってなれる この国でもっとも、さみしい場所で 埋もれている 夢にみたアトムの世界

          ろうそく

          贈りものを探していた 残らないものを探していた 灯すと樹木のもようが浮かぶ蜜ろうのろうそくは 美しいひとに相応しかった はずんで階段をおりると 夜に似合うピアノの音  ほの暗く林檎の匂いのする部屋で ろうそくは大切にされているらしく 心地よさげにちんまりと立っていた 後日訪ねると  ろうそくは、なかった あのひとは  とっておきの日に火をつけたよと微笑んだ 願ったとおりに消えてしまった何か かえり道、さみしい燃えがらを えいっ  月に向かってほうった

          ろうそく

          再来

          むかしあたしがロングヘヤーだったころ つむじ付近に百円はげが現れました 美容室で相談すると  宇宙船が碇泊した跡ですね  とおっしゃる、そのひとは見事なスキンヘッドでした あのころは一円から五百円大のはげが次々に生まれ ひとはストレスが原因だというけれど あたしにとっては 脱毛症そのものがストレスでした 慣れてくると 来たぞとわかるようになります なんとなく地肌が赤黒くなり  かゆみが出ておもむろに まあるく抜けてゆくのです 宇宙人、せっかくだったら増毛してください 故

          肉餅(ろうぴん)

          粉をこね ひき肉をこね  肉餅というものを作る 粉を丸めてのして肉を置いて  半径にひとすじ切れ目を入れる たたんで丸めて かるく押しつぶす  フライパンでじっくり焼いて  ひっくり返して  さらにじっくりと焼いて さあ できあがり  息子が家を出ていった 卒業して仕事も決まって  もう彼女と暮らしている 弟たちが居て猫たちも居てせまいわが家では       自粛期間をへて個食となり   学校が休みなら洗濯は自分でしなさい  手を洗って うがいして タオルもめいめいに

          肉餅(ろうぴん)

          ジャム

          大竹さんがくれました  たわわに実った みかんのやま ことしも  すっぱすぎて誰も食べないので 果実の成仏のために  こころをおこして ジャムを作ります ひたむきに千切りゆでこぼし ゆでこぼして ゆでこぼして さすがに六度もゆでこぼすと 苦みも恨めしさも遠くなるわ みかんと てんさい糖の踊りあう陽だまり ゆるく ゆるくなって ガラスの中でとろりと眠った

          ジャム

          会津木綿〜YAMMAさんの服

          先日、行きつけの生活雑貨のお店・橋本のPEDLARさんへ行きました。 贈りものを選ぶときはもちろん、台所雑貨や衣類、お財布など「いいものないかな…」というとき、折々訪ねています。この素晴らしいお店を知ったのは10年ほど前、YAMMA産業さんの展示会がきっかけでした。 その洋服メーカー・YAMMAさんを知ったのはおそらく『暮しの手帖』の記事であったと思います。社長の山﨑ナナさんがデザインした服を腕自慢のおばあちゃんが縫製する、というところに関心を持ったのです。それ以来、色と

          会津木綿〜YAMMAさんの服

          作って食べること

          このところ毎年元旦には、つれあいと一子が断食をしている。飢える人々に祈りを捧げているらしい。 あたしは少しだけ盛って、食べる。いつも飲み過ぎのお酒も、少しだけにして。 お節は、好きなものを少しだけ作りたいのだけど、母親が毎年大量に送ってくる。毛蟹、ジンギスカン、煮物、うま煮、黒豆、きんとん、なま酢、漬物。お年玉やお菓子、りんご、加工品(伊達巻、ハムなど)やビールなどですき間を埋めるようにしてぎっしりと入っている。冷蔵庫に入り切らないときは、ダンボールのまま陽の当たらないよ

          作って食べること

          Art in you

          千葉市美術館にて、宮島達男展を観る。 宮島氏の代表作は、1から9の数字を使ったアートである。数字はLEDが点滅していたり、人肌にペイントしてあったり、言葉(口話)でカウントしていたり、と様々な形で登場する。たった9つの数字を描いたりくり抜いたり、並べたり点滅させたりするだけで普遍的なメッセージになっている。 思えば、数字は単に数を表すだけではなく、それぞれの数学的な意味があり、観る者の思い入れもある不思議な印だ。 会場で、寿命を設定するインスタレーションを試してみた。パ

          Art in you

          ポロト湖から北大へ

          6時に目覚める。お腹がペッコペコ。まずは散歩へ。ウポポイの辺りを経てポロト湖畔へ。遠くへ歩きたかったが、ヒグマの標識があり、ひとが居ない。やっと犬を連れたひとに会い、あいさつする。うちの母は毎年ひとりで山へ入って山菜を採るのだが、怖くないのだろうか。 小雨が降ってきた。桂の木はアイヌ語で   ranko と言うんだな。いろんな場所でアイヌ語表示を見るようになった。この辺にリゾートホテルもできるようだ。コロナで幸先がよくないけれど、どうかたくさんのひとが訪れますように。そして

          ポロト湖から北大へ

          北海道 食の記録 2

          2020/09/28 朝 宿泊したhaku hostel で昨晩予約してあった朝食をいただきます。朝の散歩のあと、トーストとサラダ、目玉焼きのプレートにコーヒー、はちみつ、ドレッシング2種がついて770円。空腹も相まって美味しくて涙が出そう。嬉しい。 昼 旅の締めは、北大前の『味覚園』にて三種盛り焼肉とサッポロクラシック。ごはんを小にしたのが悔やまれる。北見の牛は美味しい。ごちそうさまでした。 自分で作った食事も、外食も、不味いものは食べたくない。ぜいたくは言わない

          北海道 食の記録 2

          北海道 食の記録 1

          2020/9/25 朝 大通りの老舗喫茶店でホットケーキセット650円也。朝は食べないかご飯食なのだが、ふだん食べないものを食べることにする。出されたものは、すべて食べる。ホテルの朝食ビュッフェ3千円には惹かれるが、いざというときのために食べ過ぎないでいたい。加工品のボテトサラダと淹れてから時間の経ったコーヒーは残念。ホットケーキは美味しかった。 昼 美術館をハシゴして、サラバ札幌よ。これから3時間半汽車に揺られ、函館へ行く。さっぽろ駅で駅弁『期間限定New三大蟹弁当

          北海道 食の記録 1

          知里幸恵 銀のしずく記念館

          4日め。自然に5時起き、今日は二度寝しない! カーテンを開いて明けていく空を眺める。 朝食後、少し休んで函館から登別へ移動。子どもの頃何度も行っているが、車で移動していたので駅舎は初めてである。ひんぱんに鬼のキャラを見かけるのは「地獄谷」から来てるのか? 入口には木彫りと、はく製の熊。写真を撮っている人がちらほら、撮る価値あるかー! と言いたくなる。 めあては『知里幸恵 銀のしずく記念館』。知里幸恵さんは(北海道では)教科書に載っており、当時から印象深かった。金田一京助氏

          知里幸恵 銀のしずく記念館

          五稜郭 北方民族資料館

          なんと二度寝して寝坊し、縄文文化交流センターは諦める。函館駅からバスで行き来していては一日がかりなので、次回こそ! まずはバスで五稜郭へ。自分は日本の歴史について知らなすぎる。展望塔や奉行所を見学し、少しは函館のことを知れた気がする。五稜郭公園は広く、松の防風林が美しく見応えがある。あいにく天気は曇りだが、昨晩の風雨を思うと穏やかで有難い。 バスで駅方面に戻り、今度は市電に乗る。途中分岐点があり、慌てて降りる。仕方なく目的地まで歩いたが、それがよかった。左は坂道、右には海

          五稜郭 北方民族資料館