光あれ。
新幹線の車窓に流れる景色はいつもよりずっと早くて、馴染みの街でなければここまでつぶさに確認することは出来なかっただろう。高速の紙芝居でも、よく知る話ならしっかり追える。僕の故郷がこのように高速で消費されるのは、少し心苦しいけれども。
僕が何万歩と踏みしめてきた道を、コンマ数秒で通り過ぎる。幹線に沿った僕のランニングコース。いつも夜に走る道が、太陽に照らされているのはなんだか気恥しい。
西陽が射し込む馴染みの道。僕は、田園が緑に覆われていることに気づいた。昨晩のランニングでは、この緑に気づく余裕もなかった。光が、この緑を気づかせてくれたのだ。
遮光カーテンは、上げたまま。僕も、新幹線の様に走り続けたいものだ。