等身大の神様。
ビジネスブーツに遺書を差込み、僕はビルの屋上の際に立つ。最悪の人生だったが、それでも決断には時間がかかった。しかし、これでもう楽になれる。
「待たれよ、青年」
振り返ると、そこには神様がいた。
「そなたはなぜ、自ら命を絶とうしているのだ」
「社会には搾取され、友人には裏切られ、あげく親までもが僕を呪っている。そんな人生、もううんざりなんです」
神様は自分のいた天を仰いだ。
「嗚呼、目の前の苦しむ人を見捨てて、どうして神を名乗ることができようか! よし、私は決めた」
神様は生唾を飲み込み、言葉を落とす。
「私は君を、ずっと特別に見守ろう」
僕は頭の中で繰り返した。ずっと、特別に、見守ろう。
「……願いを叶えてはくれないのですか? 」
「もう、私に願いを叶える力は残されていないのだ。しかし、見守り勇気づけることならば……」
僕は視線を戻し、ひと思いに跳んでしまった。神様が願いを叶えられないのなら、僕の決断は正しかったのだ。