強欲のメタファー。
まだ開発をしている。誰のために? 一体誰のために? この街は既に飽和している。人も十二分にいるし、空気なんて取り返しがつかないくらい悪い。それなのに、それなのに! あぁ、歪な都市構造は原型を忘れてしまったのかもしれない。
「あなた、そこを離れた方がいいですよ」
どこからともなく声が聞こえる。憂いを帯びた声だった。やけに説得力があったので、僕はそこを離れることにした。声は語り続ける。
「私もあなたと同じように、私の意義を考えてきました。私だって生を受けた以上、自分の役割を全うしたいと思ったのです。……しかし、私に意義のようなものはありませんでした。強欲のメタファーとして、資本主義の娼婦として、私の鉄骨一本一本は組み合わさたに過ぎないのです。それが、少なからず人々の悦に繋がるのなら、それでよかったのです。しかし、今の私はどうでしょう。誰が私を求めているのでしょうか。だから……もう限界……」
僕は少し離れた場所から、崩れ落ちる開発途中のビルを望んでいた。しかし、誰が責めることのできようか。悪いのは、我々の側なのだ。