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ヤギリン。

彼は花束を白痴な山羊みたいに食べ始めた。

「メエエ」

気付いたら彼は山羊の生き霊に取り憑かれていた。姿形は彼のままだったけど、歯ですり潰すように咀嚼する仕草はヤギそのものだったし、ゆったりとした四足歩行は様になっていた。彼は完璧に支配されてしまったのだ。こうなってしまえば仕方がない。私にすぐ懐いてくれたのが不幸中の幸いだ

「メエエエエ」

私はいずそうにしている彼がまとう衣服を脱がせてやった。裸の男が四足歩行をしているのはとても滑稽で、もともと気障なところがあった彼がそうなっていることへの可笑しさは殊更だった。

「メエエエエエエエエ」

「静かにっ!」

彼はすぐに言うことを聞いて、私のすねに頭をすり寄せた。うん、人間の頃よりずっと可愛げがある。私が彼の全身をくまなく撫でてやると、乳首からミルクが出てきた。試しに舐めてみると、いささかの癖がちょうどチーズにはぴったりな直感がした。


「ヤギリンチーズには、このような言われがあるんですよー!」

私の工房には、今8頭のヤギリンがいる。


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