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当たり前の日常。

 夜に乗る自転車は、なんだか郷愁的だといつも思っていた。彼女と僕は、想い出話に花が咲いた。彼女という鏡に反射させると、想い出があたかもその時よりリアルであるかのように、ありありと蘇る。僕は不思議な心地になった。確かに帰り道で自転車を漕いでいるはずなのに、違う情景の中で笑っている自分もいた。パラレルワールドとの共感覚を得たような、不思議な心地だった。

 青春を謳う様々な歌謡曲が、僕の背中を追い立てる。彼らがどのようなシーンを切り取って創作をしているのか、僕に知る由はない。けれど、当たり前の日常というのはちょっとした奇蹟のようなもので、このような日常が歌になり詩になるとしたら、人生は全くの喜劇であると思った。彼女の背中に反射する情景を眺め、僕は大きく息を吸い込む。

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