雨降りの祝日。
今日は祝日なのに、しとしとと雨が降っている。不本意にも社会人に片足を突っ込んでしまっていたから、今日の祝日を待ちわびていた。それなのに、この雨。僕はよっぽどついていないらしい。
在宅にはさすがに飽き飽きしていたので、僕はビニール傘をさして散歩をすることにした。雨降りの澱んだ気分の中、外出を選択するだなんて。今までの僕からは想像もつかないところだ。
公園には、傘もささずにベンチに佇む老人がいた。陽気に缶チューハイを呑んでいる。いつもであったら見ない振りをして通り過ぎるのだけれども、今日は祝日だ。
「おじいちゃん。どうして傘をさしていないの?」
「おう、青年。それは、今日が祝日だからだよ。」
「どうして祝日だと傘をささないの?」
「青年、恵みの雨って言うだろう。雨は元来、崇め奉られるべき有り難いものなんだ。それを、傘で遮ってしまうだなんて失礼じゃないか。今日は、折角のハレの日なんだよ。」
なるほど。誰の中にも哲学のひとつやふたつはあるものだ。