エチルアルコール。

依存の果てには、美しいものだけが残る。脳に雑念を認識する余裕がなくなるからだ。同時に、脳は一つの対象に固執することに疲れているから、害のあるものを独りでに排除する。結果として、何かの啓示みたいに美しいものだけが浮かび上がる。あの感覚は、多幸と哀惜が同居した唯一無二のもので、たまらない感覚だ。

私の場合は、エチルアルコール。エチルアルコールは表情を変えながら、私の前に現れる。色彩を変え、香りを変え、自分の含有量をも巧みに変えて、私を焦らす。私はエチルアルコールを求めるが余りに震えるように、エチルアルコールを求めるが余りに涙するようになった。

血管は血液にエチルアルコールが含まれていないと不安がるし、肝臓はエチルアルコールを分解する仕事がないとストライキを起こしてしまう。私の内臓供物のめいめいが、エチルアルコールを希求している。どうして私に、エチルアルコールを排除することができようか。

エチルアルコールは、そのコケテシッシュな素肌を私の眼前にさらして誘惑する。私の性感を理解して、私が求むるものを全て(例えそれがかりそめのものであったとしても)提供する。エチルアルコールに、代替する存在はこの世界に見当たらない。まったく、彼女らは本当に美しい。

私は、机の上で淫らな姿をしている一つのカクテルを見て、この文章を書いている。

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