でんでん虫と蛇。
でんでん虫は殻に頭を突っ込んだ。甘言に耳を貸さないためだ。でんでん虫の親は馬鹿正直で、騙されてあっけなく死んでしまった。
「よし、これで誘惑に打ち勝つぞ」
あとは尻に木の枝を指して、触覚を象るだけだ。でんでん虫は、近くの茂みを通った蛇に話しかけた。
「そこの蛇さん、蛇さん。僕のお尻に木の枝を刺してくれないかい」
「でんでん虫くん、どうして殻に頭を突っ込んでいるのかい? 」
「誘惑に打ち勝つためだよ、蛇さん。殻で耳を塞げば、騙されないと思ってね」
「なるほど、でんでん虫くんは頭がいいね。分かったよ」
「ありがとう、蛇さん」
蛇は、でんでん虫の尻に鋭い牙をさし、一口で食べてしまった。
「まったく、殻で耳を塞いだ気になって……話せている時点で気づかないなんて、でんでん虫くんはお馬鹿だね」
道に渦巻き状の殻を残し、満足気な蛇はゆっくりと茂みに戻ろうとした。上空から、大きな鷲狙っていることを知らずに。