敗北
「幸せは振り返らないと見えないものよ」
しかし僕は認めたくなかった。しかし振り返れば終わる。
「幸せは振り返らないと見えないものよ」
僕はパントマイムを続けなければならない。つまり、この先にしか幸せはないのだ、と自分をも騙す必要がある。振り返ることが敗北であると信じ切らなければならない。地球を中心に太陽が回っていることも、ハルマゲドンが永遠の命をもたらすことも、否定できなくなる。でも、僕はそれを選びたいと思っている。同時に、振り返って全てから解き放たれたいとも思っている。
「認めてしまえばいいじゃないか」
僕はそう思わない。
「始めから終わっていたのに」
僕はそう思わない。
「負けるのがそんなに楽しいのかい」
僕は首の骨を鳴らして、振り返ることを拒む。