時間に蓋を閉めること。
この世界には摂理という宿命があって、それに抗うことは許されない。抗えた瞬間に、それは摂理とは言えなくなってしまう。例えば、時間の流れ。これはどうにもこうにも反抗することはできない。宇宙に行って帰ってくるという疑似未来旅行は可能であるのだけれども、遡及はどうやっても不可能である。テクスト的な歴史が更新されることはあっても、本質的な時間の流れが変わることはないのだ。
「どうして、蓋を閉めているの?」
「なんとかして未来に残さなければならないからよ。」
「…でも手を加えたのなら、それはもはや別ものじゃないの?」
さて、母は答えることができるだろうか。時間に蓋を閉めることは、ある立場から見ればひどく滑稽なことなのである。