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バス。

いつもの散歩道を、僕はバスの車窓から眺めている。どのような思考回路を辿って、バスに乗り込んだかは分からない。でも、いつもの散歩道の景色が、普段よりうんと早く流れている。

「どこまで行くの?」

「…。」

「ねぇ、あなたはどこまで行くの?」

僕は声を出すことができない。なぜ、彼女が後ろの席に座っているのだろうか?気付いたら、バスの車内には僕と彼女しかいない。運転手すらいないのだ。彼女と僕は、無人のバスに揺られている。

だけど、彼女と過ごす時間は素敵だった。彼女が車内を訪れたことに思いを馳せる。こんな時間がずっと続くことを願った。


陽光が、聖母のようにそっと揺り起こす。古来、自分のことを思う人が夢に訪れると言われていた。現代の感覚では、これは真逆だ。自分が強く思うことで、その人が夢の登場人物となる。しかし、時に自分が思いもよらない人物が立ち現れることがある。彼女が僕を強く思っていたと考えるのは、傲慢なのだろうか?

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