電脳社会主義。
「お子さんは……Fの103です」
中年の夫婦は愕然としている。
「そんな……なにかの間違いですよね? 」
「チップは厳正な抽選によって〜…」
女性の耳にはいかなる情報も届かない。自然受精に拘り続けた十三年が、泡のように弾ける。男性の方は、また夜に魔女が現れることを案じて、ただ溜息をついている。
「お子さんは、Cの69です」
「あら、悪くないんじゃない? 」
白いTシャツの男は、スマートフォンでカルテにアクセスする。
「残りの凍結卵子はあと5個あるし、もう少し試してもいいんじゃない?Cの69は性格があんまりよくないみたいだし」
「確かに、そうね。それじゃあ、ディスポーズでお願いします」
「承知いたしました」
苛立つ看護師は、喫煙室に向かう。
「くそ、Aの31だからって調子乗りやがって……」