そっくり。
夢で抱いた女の感触を忘れることができない。カステラのような肌、ユダが振り返ってしまうほど麗しい髪、そして拍子木のように叩きたくなるような鎖骨。僕の頭の中の映像であるのも納得なほどに、僕の理想の女だった。
しかし、いかんせん奇妙なのは、所々に思い出の破片が散らばっているところだ。例えば、陰毛。高2の昼下がり、口に含んでしまい取り出した一本の陰毛とそっくりだ。声。廊下に響かせまいと瞑んだ口から漏れる声にそっくりだ。そして、小さな膝。初めて閂を抜いた時、握った膝の感触にそっくりだ。
なるほど、どうやら想像上で彼女たちを抱きすぎたせいで、理想の女の中に収斂したようだ。渾然一体となってしまい、一人一人を取り出すことが出来ない。まったく、それが良いことなのか悪いことなのかは分からないが、あまり健康とは言えなさそうだ。久し振りに、誰かと害のないデートでもした方がいいのかも知れない。