弔い。
「お墓にある花は、誰が弔うの?」
お盆でもないけど、墓地の駐車場にはぱらぱらと車が駐まっていた。
「お花は、自然に還るんだよ」
「それは、誰が弔うの?」
「……女神様だよ」
よく晴れた平日の昼間は、普段よりゆっくりと時間が流れているような気がする。
「私、女神様なんて見たことない」
「お花を弔う時は、姿を現してくれんだ」
「じゃあ、私が死んだ時は?」
「かなのことを好きだった人が、盛大に弔うさ」
管理者のいない墓地だが、こざっぱりとしている。墓荒らしがいなければ、カラスも図に乗ることもない。
「おじさんは?」
「生きてたら、もちろん弔うよ」
「お願いね」
「おじさんの方が、先に死ぬと思うけど」
「寂しいね」
「仕方がないことさ」
「……ねえ、やっぱりお花は持ち帰ってもいい?」
「うん。そうしようか」
かなは帰路の間、助手席でずっと花束を抱えていた。