ラグビーボール。

コーヒーメーカーのタイマー機能が午前九時半を指した。重い瞼を擦り、枕元の眼鏡をかければ、君は世界と焦点が合う。気怠さを克服すれば、煮詰まる前のコーヒーを口に含むことができる。君は布団を払い、身体を起こす。そして、窓際に鎮座しているラグビーボールを認識する。

君はもちろんラグビーボールを家に置くタイプの人間じゃない。ラグビーのルールさえもよく分かっていない。それだから君は考える。昨夜の記憶にアクセスをし、因果の結びを手繰り寄せようとする。しかし、それは暖簾に腕を押しつけているようなものだ。ラグビーボールは純然たるメタファーだ。その紡錘型の輪郭が、憎たらしいほどの質感が、君を困惑させる。どれだけ懊悩しても、ラグビーボールはそこに居座り続けるけれども。

せっかく定刻に起きたのに、コーヒーは煮詰まってしまった。でも、ラグビーボールは一つのきっかけに過ぎない。これから君は数多の障壁を乗り越えていかなければならない。だから君は、その不味いコーヒーを飲んで、状況を整理しなければならない。ラグビーボールが現われた部屋で、考えなければならない。


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