陽人。
陽人は、暗闇で眠ることがどうしてもできなかった。それがいつからなのか、きっかけが一体何であるのか、陽人には知る由もない。記憶のある限り、陽人は電気を煌々と照らしてから床に就く。誰かが電気を消してしまうと、まるでそれが陽人自身と連動した覚醒のスイッチであるかのように、瞼が開く。陽人の眠りは海峡のように深く、電気を消す以外で目が覚めたことは未だかつて無い。
しかし、私は陽人が暗闇で眠ることが出来ない理由を知っている。彼は、いわゆる地球人ではないのだ。つまりは、太陽系の外から送り込まれた宇宙人であるのだ。陽人の見たもの聞いたものは同期され、日夜研究がなされている。酸素はその宇宙人達にとって興奮作用があり、陽光をエネルギー源としているのだ。
陽人自身は、そんなことを露も知らない。光がないと眠ることが出来ないという点を除けば、むしろ優雅な人生を送っている。ガールフレンドもいるし、職場でも評価が高い。陽人は、自分が宇宙人であるという可能性すらも考えたことがないのだ。
陽人の存在を知った今、貴方も考えて見てほしい。自分が宇宙人である可能性について。それは、ごく当たり前に存在する可能性なのだ。