蓑虫。
蓑虫が潰されていた。青い汁がアスファルトに滲んでいた。虫がたかっていた。誰もが見て見ぬふりをしていた。数日間はそのままでいた。
この蓑虫が他人事じゃないような気がした僕は、図書館の図鑑で調べた。蓑虫のメスは、成虫になっても姿が変わらないという。ただオスが来るのを待ち、交尾をしたら蓑に卵を産みつける。卵の孵化を見届けたら、蓑から出て死ぬみたいだ。
この蓑虫は、子の誕生を見届けられたのだろうか。他人事とは思えない。潰された蓑虫は、片付けられちまった。その後に、雪が降った。何かを隠すような降雪が、俺は嫌だった。