雑然。
部屋が片付いていくにつれ、僕の心は荒んでいった。それはあらゆる皮肉に勝る皮肉だった。僕は雑然とした部屋の中でしか安寧に浸れないのだ。しかし、僕は更なる整然さを部屋に求めることを止められなかった。髪の毛の一本も、埃の一つも、外からやってくる排気ガスさえも気になるようになった。やがて、部屋の中で息をすることすら苦しくなった。僕は強迫的な絞首を自らに施し、新品の床の上で息絶えた。
「振り返ればあっけないけど、あの時はどうかしていたんだな」
男はウイスキーを嗜みながら、僕の話に傍耳を立てていた。
「不運な時期だったんだね」
「まぁ、今となれば笑い話だよ」
男は幾何かの侮蔑を含みながら、にたりと口角をあげた。
「でもさ、幽霊ってもっと陰鬱なやつだと思っていたよ」
「明るくもなるさ。こんなに居心地の良い部屋は、久し振りだもの」
男はコンビニのレジ袋を投げ棄てから、恭しく笑った。