弾丸。
パァン。当たり前の日常には少し不格好な音が響き渡る。僕の目の前で人が倒れた。映画の世界に入り込んだみたいだけれど、どうやらそれは現実の出来事らしかった。
銃声は雨降りのように至るところから聞こえ始める。それは凄い気分だった。バタバタと周囲の人々が倒れていく。僕は不思議に思った。こんなにも盲滅法に弾丸が浴びせられているというのに、どうして僕には当たらないのだろう。まるで、僕だけは打たないように謀っているようだ。
人は恐怖に隣接すると自然と笑みがこぼれる。僕は可笑しくなった。僕だけが選ばれた人間で、世界は僕を中心に回っているんだ。そう確信した瞬間、僕の頭蓋骨を誰かが撃ち抜いた。
「…こいつ笑ってやがる」
作戦終了後、駆り出された兵士は奇妙な遺体をみてそう呟いた。俺は煙草をふかしながら、後輩に答えた。
「そいつにとっては、これでよかったんだ。」