バスジャック問題。
高速バスには殺人を企てる者が3人乗っていた。
1人目は、自尊心に犯された奴だった。社会は自分にだけ上手くいかないように構築されているという陰謀に囚われ、彼女はバスジャックを企てていた。ポケットにはスタンガン、ポーチには手榴弾。
2人目は、組織のために死のうとする奴だった。彼は極左が転じてカルト化した団体で、それなりのポジションにいる構成員だ。もっとも思想に敬虔である彼は、進んで実行犯を引き受けた。革ジャンの奥には、腰に巻き付けられたダイナマイト。
3人目は、愉快犯だった。乱数調整的に弾き出された行動が、たまたまバスの乗員諸共死へ追いやることだった。リュックサックには、ガラス瓶に収納された王水が3本。
さて、私一人でこの3つの事象を片付けることはもちろん不可能だ。1つずつ解決しようにも、その間にいずれかが実行をするだろう。ただ、乗り合わせた乗客にはもちろん気の毒だが、3人がめいめいに実行されるよりかは、相対的被害者は少ないのかもしれない。