クリスマスイブ。
「その日は無理かな」
彼女の返答は素っ気なかった。僕はそこに危うさを感じ、すぐに返信をした。電話もかけた。しかし、彼女は消えてしまった。繋がるのはしごく簡単な時代だけれども、そのせいで頼り切っていた糸が切れた瞬間になすべきことを我々は忘れてしまっている。僕は彼女を、完全に失ってしまった。
彼女とは高校生の時に交際していた。お互い、3人目くらいの交際経験だった。世界中の人間が三回目にするような交際をした。それなりに上手くいったとも言えるし、通り過ぎただけの関係とも言えた。少なくとも、付き合っている瞬間も、お互いが世界で一番幸せだと錯誤するような関係ではなかった。半年くらいで別れた。それほど酷い別れ方でもなかったから、その後も関係が途切れることはなかった。
大学生になってから、何度か時間を共有した。季節の移ろいくらいの頻度で、僕と彼女は身体を重ねた。ドライブであったり、食事であったり、そういった時間はもちろんあったが、多分お互いが身体を重ねることが目的であった。それでも、僕と彼女の関係は良好だった。日常の不満であったり悩みであったりを共有できる仲だった。これからもそうであると信じて疑わなかった。
僕は彼女から連絡を絶たれてから、その理由を探していた。しばらくして、僕はその理由に思い当たった。僕が誘った日が、クリスマスイブであったのだ。曖昧な関係を重ねるには、余計な意味が付帯する一日を僕は選択してしまっていたのだ。
あの日が、クリスマスイブでなかったらよかったのに。僕は今でも、彼女のことを時々思い出している。