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父の空白

至極当たり前のことだけれども、僕が物心着く前のことを父は知っている。それは、僕の知らない僕を知っているということだ。それがとても理不尽に思える時があった。

父との関係は、あまり芳しくなかった。それは常識の範疇なのか、世間一般的にみてもかなり冷え込んだ関係なのか、僕にはわからない。ただ確かなことは、僕と父との間にはもう埋めることができない空白がある。今からでも埋めることができるタイプの空白ならよかったのだけれども、残念ながらそうではないみたいだ。

空白がもたらすものは、一体なんなのだろうか。しばし考える。父はこの空白に、僕との少ない記憶をどう重ねるんだろう?

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