動物園の動物。
マンションに入れない。暗証番号が変わっていたことをすっかり忘れていたのだ。動物園の動物のように油断していた僕は、鍵をかけずに煙草を買いに行ってしまった。暗証番号はすっかり変わってしまっていた。さて、どうしたものか。
冷静に考えて、管理会社に電話するなり穏便にことを済ますことも可能ではあったのだけれども、暗証番号にエラーが表示されてから僕の頭はカアッと熱くなってしまっていた。僕は、昔から熱くなると手が付けられなくなる性分だった。
僕はマンションの外へ出て、鍵なしで侵入できる場所を探した。こういう時の行動力は目を見張るものがある。僕は、1階のフェンスとフェンスの間の「隙間」に目をつけた。細身の僕なら、そこに滑り込む勇気さえあれば入れそうだ。そして、躊躇することなく僕はそこから侵入した。
鍵のかかっていない自分の部屋に帰ってきて、僕はふと怖くなった。動物園の動物は、僕だけじゃなかったのだ。