安置。
クーラーの効いた部屋で目覚めると、ふと自分が遺体になってしまったような気がする。それは、死後の世界の疑似体験なのかもしれない。意志を持った遺体として、苦しみのない金縛りの中しばらくを過ごす。明るい遺体安置所だけど、その明るさは遺体となった僕にいかなる寄与もしない。僕はただ遺体として、時間を摩耗するだけだ。死はとても静謐で、あるいは一つの完全体なのかもしれない。そういう自己完結性が、僕はわりに好きだ。
ゾンビになるためにはかなり特別な資質が必要だけど(何しろ、この状態から動かなければならない)、遺体になる権利は多くの人に開かれている。特に、こんなに暑い日が続くなら、試しに遺体経験を積んでおくのも一つの選択肢だ。