runner。
何度も見かけるランナーがいた。いつも決まった蛍光のジャージと、特徴的なランニング・フォームが印象的で、僕は彼を一人のランナーとして認識していた。そしてそれは僕にとって俄に信じることが出来なかった。というのも、余りにも様々な場所で彼を認めるから、不思議なのである。ルーティン的に同じコースを走るタイプのランナーは少なくないが、彼のようなランダムウォーク的ランナーは珍しい。僕は彼を認める度に、よくまぁこんなに様々な道を走るなぁ、と感心していた。
旅行先で彼と遭遇したこともあった。あの時はひどく吃驚した。彼はフォレストガンプなのかも知れない。道の向こうから軽快なピッチで迫ってくる彼を見つめながら、思っていた。彼とすれ違う瞬間、彼は私に一瞥し呟く。
「いつもの。」
ヒヤリとした汗が背中を伝う。彼は私をランドマークにしていたのだ。