楡。
ハルニレが抱いた初めての感情は、温かみだった。
懇々と注がれた愛情は、ハルニレに感情の萌芽をもたらした。ハルニレはその温かみに触れ、感情を抱く快感に惑溺をした。快感に溺れるうちに、それは意思になった。もっと、もっと、もっと……。ハルニレの強い意思は成長を加速させ、みるみる巨木へとその幹を太らせた。
しかし、家族はその変貌を訝しがった。日光を大きな葉が遮り、隆起した根は庭の芝生を駆逐していた。家族は伐採を決めた。その頃、言葉を理解していたハルニレは、恐怖に戦いた。切られてしまう。早く、早く、早く……。
ハルニレは精一杯の無理をして、一晩で家を飲み込みながら成長した。ハルニレは飲み込んだ家族を説得しようとしたが、その前に全てを吸い尽くしてしまっていた。