蛹化
目を覚ますと、私の隣には大きな蛹が横たわっていた。寝惚けた私の頭には、その真っ白な塊が何かを理解することができなかったけれど、呆然と見つめているうちに彼が蛹に辿り着いたことを悟った。私は瞼を擦りながらスマートフォンを起動し、市役所の蛹処理科に電話を入れた。
「…同居人が蛹になりました。」
彼も疲れたんだろう。でも、蝶になることを許してしまったらこの世界は回らない。私は大きな蛹に布団を被せ、そのふくらみを眺める。こんな閉塞した時代で、蛹になった彼を誰が責められるだろう?
「…ばーか。」
私は蜘蛛になりたい。美しい蝶を巣で絡み取り、喰らい尽くしたい。外は驟雨で、私は溜息をつくばかりであった。