もつ煮込みラプソディー。
魔女は今日も何かの内臓をコトコトと煮込んでいる。庭でハーブを摘むのは僕の役目だ。でも、いくら僕が出鱈目に雑草を摘んできても、魔女は調和の取れたもつ煮込みを仕立ててしまう。あるいは、しきたりのようなものなのかもしれない。あらゆるものに手順があるのだから、魔法にだって踏襲すべき手順があるのかもしれない。
「さぁ、いただきましょう」
魔女の声がかかると、僕の手足の緊張がほどける。ハーブを摘む夕方ともつ煮込みを食べる夜にだけ、僕への魔法は解かれる。
「いただきます」
もつ煮込みはいつも、この世のものとは思えないほどに美味しけれども、一体なんの内臓なのかが分からないから、いささか気味が悪い。
「そういえば、今日はスズランを摘んできたね」
「はい。とても美味しそうで」
「スズランには毒があるのよ」
「なんと、あんなに可愛らしいお花なのに」
「まあ、私の手にかかれば簡単に解毒ができるけれどもね」
魔女はスプーンで掬ったもつを眺めながら呟いた。そうしている間だけ、魔女は少女の姿に戻る。この小屋では、色々な魔法が張り巡らされている。