時間。

 時間は不可逆で、その流れは一定らしい。しかし、物理学に時差という曖昧な概念が定義されていることに、僕は強い違和感を憶えていた。例えば、日本とイギリスでは約9時間の時差がある(とされている)。そのことが、いまいち腑に落ちない。僕が今望む太陽が、イギリスからは隠れている(らしい)。惑星の球形やら、自転の速度やら、網目のように絡み合う様々な「法則」が、「時差」という定義によって矮小化されているような、漠然とした不満があった。

 僕がフライトに蠱惑的な魅力を感じている所以である。地平線、水平線、雲上の世界、そして何より時間への真っ向からの挑戦。その時僕は、物理法則を超越したような錯覚を楽しんでいる。僕はアインシュタインであり、ホーキングなのだ。

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