車輪に石投げ。
僕が線路に石を投げ込んでいると、警察官が声をかけてきた。
「ねぇ、君は一体何をしているの?」
「…見たら分かるでしょう。線路に石を投げ込んでいるんです。」
「そうだね。君は、線路に石を投げ込んでいる。邪な気持ちでそれをやっているのだとしたら、今すぐ止めた方が良いと思うな。」
「実害はないはずですよ。高速で進んでいる列車にとって、線路の上にある小石なんて些末な存在です。誰も、小石があったことに気付きもしないでしょう。」
「確かに、君の言っていることも分かる。けれど、君が線路に石を投げ込んでいる様を見て、怪訝に思う人も少なくないだろう。場合によっては、交番に通報が来るかも知れない。…僕が来た意味は分かるかな?」
「いいでしょう。今日の所は一旦止めておきます。」
「…何が君をそう突き動かしているんだろう?」
「これは、自分への啓示でもあるんです。たとえ列車が止まってはくれなくても、僕に出来ることはこうして問題提起をすることだけなんだ、ってね。」