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時空の狭間。

4月。35人が入れ替わり、立ち替わる。掲示物はすべて清算される。あの一年がなかったかのように。教室はありきたりな入れ物へと戻る。きっと、彼ら彼女らも記憶からも、あの教室は姿を消してしまうのだろう。

私は、教科書を教卓に放る。20年も内容が変わらない教科書。20年!それは赤ん坊が社会に大人として認められるまでの時間だ。社会の様相は一転し、まるで違う星に迷い込んでしまったかのようだ。それなのに!この変わらない教科書。35人が入れ替わり、立ち替わる教室。私は、砂場で遊び続けているだけなのかも知れない。城を築いては壊し、築いては壊し…飽きもせず、いやそれが仕事であるかのように言い訳をして繰り返してきた。

巣立つ、とこちらが言うのはなんだかおこがましいが、この教室を巣立っていった生徒達はめいめいに社会の血脈として精一杯今を生きている。私だけが、この時空の狭間で砂遊びをしている。私だけが立ち止まっているのだ。

教室の窓から望む景色は不思議とあの頃から変わらない。それは、私の錯覚なのかも知れないし、社会から突きつけられた皮肉なのかも知れない。

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