雨女。
雨女(あまめ)はその名前の通り、芸術的な雨女だった。彼女が扉を開いて外界に足を踏み入れると、雲一つない青空でも忽ち暗雲が立ち込めた。彼女が学校へ登校していた日々は、毎日が雨降りで町が一つ沈んでしまった。やがて魔女と噂され、彼女は家へ引きこもるようになった。
しかし、雨女(あまめ)が家へ引きこもると、今度は日照りが続いた。雲一つない青空が常で、町は深刻な干魃に陥った。あれほど肥沃であったダムも、今に枯れてしまいそうだ。町長は、藁にも縋る思いで彼女の家を訪れた。
「雨女(あまめ)さんは、いらっしゃいますか? 」
「今朝、娘は死にました」
一人の少女に対して、その力は余りにも重すぎたのだ。二度と雨がその町に訪れることはなく、町民はみな喉の渇きに悶えながら死んで行った。
世界の均衡は、我々が思っている以上に儚いものなのかも知れない。