カマキリの選択。
カマキリくんは、悩んでいた。余りのストレスに、ぐったりとしていた。見かねた年上のカマキリは、声をかけた。
「やぁ。どうしてそんなに落ち込んでいるんだい。カマキリが俯いているのは、滑稽だよ」
「……あなたは気楽でいいですね。僕は、明日が見えないですよ」
「もしかして、交尾のことで悩んでいるのかい? 」
カマキリくんは、顔を上げた。
「そうなんです。僕は雌に食べられてしまうことを思うと、交尾なんてしたくないと思うんです」
「君、考えすぎだよ。僕達は、子供が残せればそれでいいじゃないか」
「しかし、子供を残すにしても、他の雌達とも交尾をした方が良いとも…一匹の雌のために喰われてしまうなんて、僕は嫌なんですよ」
「ただねぇ、喰われちまった方が雌は沢山卵を産むらしいんだよ。それに投げやりな交尾をしたら、逆上されて追いかけられるかも知れない。雌の方が強いから、逃げきれやしないんだよ」
「はぁ、僕はどうすればいいんだろう。ヒンウマンビイングに産まれたら、もっと気楽に生きれるのになぁ」
「まったくその通りだよ」