A ghost tour.
「俺みたいな奴ばかりじゃないからさ、気を付けた方いいよ」
初めての幽霊は、僕に忠告をしてくれた。しかし僕の好奇心は、そのような箴言を聞く耳を簡単に塞ぐきらいがある。僕はちょうどいい事故物件を見つけるとすぐに引っ越しをして、幽霊を探した。
「随分引っ越されるんですね」
市内での転居を繰り返していた五回目、職員は訝しさを上品に隠しながら僕に尋ねた。
「ええ。住んでみると、初めは見えなかった瑕疵が浮かび上がってくるもので」
職員は幽霊みたいに素敵な相槌をうち、仕事に戻った。あるいは、彼女は本当に幽霊なのかもしれない。この頃僕は幽霊と話し過ぎて、死者と生者の違いを見失っているから。
「……止めてっ!」
僕が抱き締めると、幽霊は錯乱した。そして、刃物を僕に向けた。あるいは、彼女は生きていたのかもしれない。