Horizon.
地平線に向かって旅を続けている。地球が球体であることを確かめるみたいに。でも、ただひたすらに真っ直ぐ道が続いているわけではない。これだけ文明が発達しているのに、地球を一周できる道は開発される予定もないらしい。だから、仮に途方もない時間をかけて一周を果たしても、その足跡が綺麗な円を描くことは叶わない。僕は円のたゆみが好きだ。それなりな楕円も悪くは無いと思うけど、円の美しさに勝るものはないとさえ感じる。あるいは、ピタゴラス教団の亜種なる者の末裔なのかもしれない。それは確かに信仰に近く、崇拝に近い心の機微を僕は認めている。
土星の輪っかみたいな道が出来れば、資本主義の歪みと有り余る強運を謳歌した資産家達はこぞって訪れるような気がする。それを妨げるのは、矮小なナショナリズムなのかもしれないし、単なる馬鹿馬鹿しさなのかもしれない。しかし、人は空に魅せられるし、高さを盲目に競ったりする。たまには視線の彼方であったり、美しい弧を勇ましく求めるのも、また人間の一つの形として相応しいと僕は思っている。