ノマドソウル。
魂は彼女を求めていた。だから行ってしまった。僕は肉体を遠ざけるべきでなかったのだ。魂も大事にできなくて、いったい何を大事に出来るだろう?もぬけの殻となった頭では、もう考えることはできないけれども。
日常は簡単に摩耗できる。習慣の累積で肉体は自走する。魂の不在は一人称的な問題に過ぎなくて、生活をこなすことはそこまで難しくない。ただそこに儚く存在していた、僕の魅力みたいなものが損なわれただけだ。しかし、それはもう些末な感傷さえ僕に与えない。僕はただ、行ってしまった魂を妬むことしかできないから。
彼女の傍にいる僕の魂は幸せだろう。肉体がそこにはないから、疎まれることもない。魂はほしいがままに彼女を眺め、触れ、考え、舐め、憎み、そして愛して、肉体にはなし得ないことに耽り続けるだろう。僕には想像すらできない、多幸な欲情に溺れ続けるだろう。でもそれは、魂を蔑ろにして肉体を遠ざけた僕に責任がある。
魂がいない頭の、静けさがうるさい。