スター・ラヴァー。
星空の下でも、僕は思いを告げることが出来なかった。星はありのままの輝きを降り注いでくれているのに、僕の心の壁はすんと、まるでベルリンの壁が立ち戻るみたいに堅牢さを殊更にして、気づけば僕は口を開くことすら難しくなっていた。寄せ合う肩は体温を共有しているのに、言葉は結び目が解けたように紡がれることはなかった。
「あ、流れ星」
「……」
それは、星屑に過ぎないのに。
「何をお願いしましたか?」
「……」
不可能な復唱を課すことは、夢が往々にして叶わないことに対するメタファーだ。
「……寒いですね」
「……」
星空の下は宇宙とも繋がっていて、時間軸がうっかり交錯をしかねない。彼女が白骨化したり、ホモ・ルーデンスに立ち変わったり、有機物を分解する微生物になったりする。僕もまた、隣の宇宙に存在する瞬間がある。星空の下は、そういった危険を常に孕んでいる。
「……別れよう」
そんな声が聞こえた気がした。僕たちは仮に付き合っても、どちらかがその言葉を発するのだ。