操り人形。
都合がよくていい。割にあわなくていい。自分の気持ちは、自分でも分からない。たぶん、あなたのことは好きでも嫌いでもないんだと思う。ただ私は、「はい」が言えても「いいえ」が言えない。それでもいい。それだけでいい。
あなたは私に糸を括った。ひとつ、ふたつと結び目が増えていった。私はとても嬉しかった。それが愛だと信じて疑わなかった。少し動きづらくなっても、愛だと思えば苦しくはなかった。
ある日、あなたは私に背を向けた。私はシャツの背中を掴もうとした。でも、動けなかった。節々を結び目が縛り、自分の意志では動けなかった。あなたはちらちらと私を振り返りながら、離れていった。まるで、私が確かに繋がれていることを確かめるみたいに。
初めは傷ついた。しかし、少し時間が経過すれば、あなたは私のもとへ帰ってきた。そして、一晩中私で遊んだ。それは余りにも甘美な時間だった。朝を迎えると、あなたはまた背を向けた。待つことは、辛くなかった。あなたに躍らされた記憶を、そのリズムを反芻した。あなたにもう一度遊んでもらうことを思えば、永遠さえも短かった。
私は操り人形。躍らせられて、捨てられる。その瞬間は泡沫の夢。でも、その瞬間は誰よりも幸せなのだ。