後回しの極意。
僕は怠惰な人間だから、ありとあらゆる〆切を設定して生きてきた。何時迄に目を覚まし、何時迄に歯を磨き、何時迄に珈琲を飲み……そうすることで、なんとか真っ当に生きてこれた。
しかし、人間にはエラーがある。ある時、本当にうっかり一つ〆切を逃してしまった。〆切はドミノのように後ろ倒しにしていき、ついには僕は退廃してしまった。後悔先に立たず。僕は文字通り泣き寝入る。
「後回しにすればいいじゃないか」
「後回しを憶えると、何もかも後回しにしてしまうじゃないか」
「それも、後回しにしちゃえばいいんだよ」
「……人生を後回しにしろということか? 全てを後回しにして、死んでしまっまたらどうするんだい」
「そしたら、丸儲けじゃないか」
弱い心の夢をみた。