星座作り。

「あれが、本当にオリオン座なの?」

星空はよく撮れた写真のように美しいが、目の前は暗く彼女の顔も凝らさないと見えない。

「そうだよ。ギリシア時代から人々を魅了する、素敵なサインだ」    

彼女の家系は、全員が生粋の都会育ちだった。父方の祖父母も、母方の祖父母も絢爛なタワーマンションで極めて都会的な生活を営んでいた。それだから彼女は、自然を排斥されたまま大学生になった。季節の移ろいというものや、ありのままの自然は、全て作り話だと信じて疑わなかった。

「ふうん」

僕は彼女が泣いて喜んでくれると思っていたから、少し拍子抜けした。

「綺麗だとは思わない?」

彼女は宇宙人を見るような目で僕を捉えた。

「綺麗かどうかは分からない。でも、大昔の人が作った線形に、それほどの魅力は感じないわ」

彼女は冷たい息を飲んで、首を振った。

「どうせなら、自分で選んだ方が素敵なんじゃないかしら」  

なるほど、僕はその考え方にずいぶん感心した。その後、僕と彼女は朝日が昇るまで星座を作り続けた。ウォンバット座、8月の紫陽花座、1966年の世界史教師座。それは、とても素敵な時間だった。

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