新生活プレイ。
娼婦は困惑した。派遣された部屋のリビングには、未開封のダンボールが堆積していたからだ。
「やあ」
青年はまるで日常の一部みたいに会釈をした。
「あの……」
「90分で20,000円だよね?」
青年は新札を2枚、娼婦に手渡した。
「よし、じゃあ早速取り掛かろう。まずは……」
娼婦はこれまで少なくない数の客を相手してきたが、もちろんこのような状況は初めてだった。しかし、金を受け取ったからには付き合わなければならない。青年は決して、ルールを逸脱している訳ではないのだ。
「うん、本棚とベッドの組み立てまでは終わりそうだ」
「今日はありがとう。とても捗ったよ」
結局、娼婦は最後まで服を脱がなかった。
「あの……」
「ん?」
「今日のどういうところが、お好きなんですか?」
「ふむふむ」
青年は少し躊躇ったが、引越しが片付きつつあり機嫌が良かった。
「これはつまり……ある種のプレイなんだ。君とこの部屋を拵えたことで、君との新生活を
追想することができる。君と組み立てたベッドの上で、僕は毎晩ねむるんだ」
娼婦は客の相手している時、時々あの奇妙な客のことを思い出す。