点字ブロック。
散歩道。ふらついて、上手に歩くことができない。この強い日射しのせいなのか、不安定な精神状態によるものなのかは分からない。何にせよ、歩くという行為はあまりにも自然な営みであるから、その仕組みを言語化して脳に再解釈させることがとても難しい。僕は立ち止まったが、いくら考えても歩き方の指南書たるものが見当たらない。歩き方を忘れてしまった僕は、やけに強い陽光に晒され続けることしかできなかった。
暫くして僕は、深呼吸をしてから状況を整理した。僕には歩行のフォームが、そしてそのリズムが求められた。風も日射しも、それをもたらしてはくれない。困り果てた僕の視界には、点字ブロックが映っていた。法則、と僕は思った。一時停止、誘導。ブロックの交錯を見た僕は、その法則を思い身体を動かした。それはリズムとなって、神経に刻まれた記憶を思い起こさせる。
もしあなたが歩き方を忘れてしまった時は、点字ブロックを参考にするといい。人生にも、点字ブロックなる法則性をもった記号があれば、随分生きやすくなるだろう。